2002年、今年は桃の開花も例年になく早まり、摘蕾作業の後、人工受粉に追われます。幸い天候には恵まれていますので受精自体は良好かもしれません。開花中に霜などに見舞われますとその限りではありませんが。
というわけで、花粉の採取から人工受粉までの作業をご紹介致します。


  目的

桃は本来、自家受粉によって受精しますが、中には花粉が少ない品種、まったく無い品種があり、それらは人工受粉をする必要があります。
多い品種と、無い品種を混植(同じ園に両方植える)して、交互に毛バタキで擦る方法もありますが、今では一般的に予め花粉を採取・保存しておき、それを利用する方法がとられています。その場合、毛ばたきを使う手作業と機械(ミスト)による受粉の2種類があります。


  手順

まず、花粉の採取からお話しなければなりません。
当然、自然の状態であれば花粉のあるものは、気温の上昇によって蕾が開花し、雄しべの先端の葯が開いて、虫や風などにより容易く雌しべに付着し授精します。これを自家受粉といいます。

花粉が少ない、または持たない品種は自家受粉が出来ません。そこで、花粉の多い品種の蕾から採取した葯を開葯器で開葯させ、花粉を取り出し、雌しべの先端に付着させてやります。これを人工授紛といいます。

花粉を採取するため、摘蕾(てきらい)を兼ねて蕾や花を集めます。かさを桃の枝に逆さに吊るし、落とした蕾や花をキャッチ。強風の日は、せっかく集めた花がみんな風に飛ばされて悲惨なのです。(T_T)





かさで集めた花、蕾はダンボールなどに溜めていきます。摘蕾も兼ねているので、まだ蕾が固いものから、すでに開花したものまで様々です。毛ばたきによる受粉では10アール当り、約1kgの花が必要となります。


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蕾から花になるまでの様子。

花粉を採取するには3番〜4番(風船状の蕾)の状態が最適です。

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ちょっと画像がわかりにくいですが、真中に雌しべが1本(初め薄い緑色、やがて褐色)、その回りに雄しべが30〜40本ほどあります。雄しべの先に葯がついていて(5番の赤い点々の部分)、その中に花粉が詰まっています。

5番は葯がまだ開いていない状態なので花粉がたくさん採取できますが、6番はもう葯が開き、花粉が出ているので多量の採取は期待できません。7番は花粉がすでに飛び散ってしまった状態です。

摘み取った花と蕾から葯だけ分離させるため、
採葯機にかけます。
ガクや花びらはゴミとして吐き出されます。




採葯機にかけて分離した葯。(上)
この時点ではまだ花びらや花糸等のゴミがたくさん混じっています。(下)




それらのゴミを取り除くため、ふるいにかけます。これできれいな葯だけの状態になりました。それをトレーになるべく薄く、均一に広げます。


これは開葯器です。この中で葯を12〜4時間乾燥し、開葯させます。
適温は21〜23℃

開葯後の葯。ちょっと擦るとたくさんの花粉が出てきます。これらを封筒などにまとめ入れ、缶に入れて冷蔵庫で受粉の時期まで保存しておきます。

精製器でさらに精製し、花粉だけの状態にして利用する人もいます。

こちらは、花粉の精製器といって、更に目の細かいふるいに回転するブラシで葯を擦りつけ、花粉のみにするものです。

実際には桃の場合、開葯した葯のまま、でんぷん(片栗粉)に混ぜて増量して利用しても差し支えありません。
梨やキウイのように一花づつ綿棒や専用の受粉機を使う場合は精製が必要です。


顕微鏡で花粉の発芽(花粉管)状態を確認して受粉します。前年の冷凍貯蔵した花粉を使うときには必ず確認をしなければなりません。

ご近所の毛ばたきによる受粉作業。先の方に鳥の羽がついていて、そこに保存しておいた花粉を付着させ、一枝一枝擦り歩きます。とても根気のいる仕事です。

受粉は大変重要な作業なんですが、仕事の跡が目に見えないので、「張り合いの悪い仕事bP」に挙げられています。



ミスト機を利用しての人工受粉の様子。





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